Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

      “ぎゅうっ、とvv” 〜別のお話篇

 


今年の冬はずっとずっと寒いの。
12月の最初から寒いばぁいは、
クリスマスとかは そーでもなかったりしたのにネ。
逆に、全然寒くなくって、
スキー場とか雪が足らなくって困った〜って
そんな冬もあったそーなのにね。
今年の冬は凄んごいスタミナがあるんだなぁって、
進さんへメールしたらね、

 『セナは物の描写が本当に上手だな』って

あのねあのね、褒められちったのぉ〜〜〜vv
それも絵文字つきだったんだよ?
うん、
ハートが重なってるのがドキドキって動く、どーがのやつ。
ホントだもん…って、ヒル魔くんてば
一気にそんなに後ろまで
砂煙立てて下がってかないでよ。



      ◇◇


節分も過ぎての、暦の上では堂々の“春”だってのにね。
成人の日にやって来た、
災害レベルな大雪には見舞われなんだものの、
それでもそれなりの寒気は襲い来たようで。
何より風が強いのが、小さな小学生にはなかなかにキツイ。
少しほど赤みの増してるジンチョウゲの茂みを、
そりゃあ甘く温めているよな、
陽あたりのいい見た目に油断してしまい。
わーいっ♪とばかり、スキップ踏みつつお外へ飛び出せば。
寸の足らない小さな和子なんぞ、
一吹きで押し倒してやるわという気も満々な、
冷たくって馬力もある鋭いのが、
“びゅうぉおおぉ…”なんて唸りながら押し寄せたりして。

 「うやぁあぁぁ〜〜〜。」

今はまだ裸んぼさんの、
モクレンやサクラの枝をわさわさって揺らして。
小さな坊やに“一時停止”を強いる北風が、
勢いよく吹きつけて来。
小さな背中へ降ろしてたフード、
丸ぁるく縁取るファーを踊らせるほどの風に遭い。
真っ直ぐな舗道の途中で、
ついつい立ち止まってしまった小さな瀬那くん。
吹きやむまで我慢だと、
はややぁ〜っという かあいらしい悲鳴を上げつつ、
両足を踏ん張って耐えておれば、

  ……………ぉぉぉぉぉぉおおおおっ、と

最初は、それもまた
後から後から覆いかぶさるみたいに吹いてくることで、
何重にも重なって聞こえてる、
風の音の1つかなって思えたの。
でもね、あのね、

 “……………あ。”

頑張ってお顔を上げて、
陽あたりのいい道路の向こう、ずっと遠くまでを見渡せば。
お昼間の、あんまり人影がない道を、
ずんと遠くから走ってくる人がいて。
他の大人たちも
強い風に押されるあまりにと立ち止まってたせいと、それからね。
あんまり一直線で、勢いよくて、
リモコンでピッて操作した“早回し”の動画とか見てるみたいで。
本当の実物が動いてるという“現実”なのだという実感が、
一瞬 曖昧になりかかったものの、

 「あ、進さんだっ。」

  そうと判ったら、あっと言う間。

強ばってたお顔がほどけたのも、
誰だか判りにくいほど遠かったのが、
目鼻立ちもすっかり判るほどまで駆けつけてくれたのも。
進さんが通う王城のガッコは、
大学のになってからはもっと遠くなったのに。
冬は体がなまるからって、
余計に走らなきゃならないんだってゆって。
そっからこうして、
毎日のジョギングで走って来てくれてて。
そんでもあのね? こんな寒い中だから、
進さんは へーきでも、
通りすがりの他の人はさっさか動けないんだよって、
桜庭さんがゆっててね。
それもあるから、ぶつかったら危ないから、
グラウンド以外では、トップスピードでは滅多に走らない進さんなのに。

 『…滅多に、じゃねぇだろ。』

あんな、
ごついわ頑丈だわ、しかも途轍もなく速いわってな、
弾丸かバズーカ砲かって野郎に 不意を突かれてぶち当たられたら、
最悪 大怪我しちまうなんて言うの、ヒル魔くんたらひっどーいっ。

 「セナ。」

真剣なお顔の進さんは、あっと言う間に駆けつけてくれて。
風のびゅうびゅうも忘れて、
セナくんもたかたったと駆け寄ったそのまま、

 「進さんっ!」

トレーニングウェア姿のお兄さんへ“えいや”って飛びついた。
だってネあのね、冬の寒さむの間は、
進さんだって風邪を引かないようにって、
ウィンドブレーカの下へ、
汗をよく吸うスェットとか分厚く重ね着してるから。
セナだっていっぱいぱい着込んでるから、
思いっきりぎゅうってしないと届かない。
進さんのお胸にセナの頬っぺスリスリも届かないし、
セナの頬っぺにも
進さんの堅いたいお胸や中身が届かないんだもん。

 『……中身って。』

これへはさしもの小悪魔様も、
二の句が告げなくなったのだそうで。

  そしてそして

きゃい〜〜〜vvっと しがみついたのは、
小さな小学生だって言うのにね。
どんな重量級の相手でも、
四肢を踏ん張りがっつりと止められる、
日本随一のラインバッカーさんなはずが、

 「〜〜〜〜〜。////////」

 「お~~い、そこの凸凹ふたり。」

遅ればせながら、追って来たらしい桜庭さんが、
ひいこら言いつつ追いついたそのまま、
進さんの逞しい肩へと手をついたその途端、

 「  お?」
 「はや?」

そりゃあ雄々しくて
ちょっとやそっとのことじゃあ、
動かざること山のごとくな不動の明王様が、
ぐらりとその足元を揺るがすと、
おっとっとっとたたらを踏みかかったそうでございまし。

 「え? 進?」
 「進さん? どしたの?」

まずはあり得ない状況に、
大慌てとなったセナくんと桜庭さんの
大小二人掛かりで支えたところ、

 「あ、ああいや、ちょっと立ち眩みを…。」
 「な…っ!」
 「貧血ですか? 大変っ!」

ますますのこと
聞き捨てならない〜〜っと慌てたセナくん、

 「セナ 頑張って、
  バレンタインデーには おーしーチョコ作るからね?」

だから進さんは、出来るだけ あんせーにしてるんだよと、
よく判らない“禁令”が出てしまったそうでございます。




     〜Fine〜  13.02.08.


  *今年は
   ワイドショーやニュースの中での特集コーナーのBGM、
   国生さんの『バレンタインデー・キッス』より
   パヒュームの『チョコレイト・ディスコ』の方をよく耳にしますね。
   元気が出るようで楽しいし、
   ティストや歌詞のノリが今風だからかなぁ。

  *それはともかく。
   お不動様が何でぐらついたかも
   内心しっかり判ってたろう桜庭さんとしては、

   「………え?
    その禁止令って、もしかして僕が監視するのかな?」

   ラバくん、ちゃんと豆まきしましたか?
   厄祓いしましたか?(笑)

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